★2010年録音のBada Beep Music盤「In The Element」でアルバム・デビューを果たし、その後もCellar LiveやMocloudよりのマスターズ・レガシー・シリーズ(ジミー・コブ、ロン・カーター、ベニー・ゴルソン&アルバート・トゥーティー・ヒース、ジョージ・コールマンらの大物達と次々コラボ)で着実に支持層を拡大してきた、アメリカの人気ピアニスト:エメット・コーエンの、今回は、「現代版エメット・コーエン流のストライド・ピアノ」に並々ならぬ拘りを見せたコンセプチュアル編。編成はレギュラー・トリオを軸に、トランペットやテナーサックスのゲスト参入曲もある。
★跳ねよくリズミカルに舞い踊るが如く躍動する軽快敏活にして確たる重みあるドラムの轟鳴や、ウネりを利かせてゆったりとドライヴする肉厚ベースの匍匐或いは遊泳ぶり、に頼もしく導かれながら、歯切れよく鋭角的でありコロコロとよく転がる石ころ風タッチのピアノが、ある時は古典志向スタイルに徹して、ストライド〜ブギウギ〜ラグタイム辺りの色合い濃い陽気で長閑な牧歌的ブルージー・スウィンギン・アクションに嬉々として興じ、またある時は今日型ハード・バップの王道を行くビタースウィートでキビキビした凛然毅然たるキレ味鋭い立ち回りワザ(もしくは繊細でしっとりとした耽美的ロマンティック・バラード・プレイ)を繰り出して、メリハリの利いた中々ドラマティックな見せ場を溌剌と、自在に飾りきった会心打内容。
★概ね、トリオ単独曲ではストライドやブギウギの妙技が活かされたトラッド寄りのオールド・ファッションな様式が基調を成し、ホーン入りになると一転ごくストレートアヘッドな現代ポスト・バップ熱演が展開される、というのが大凡のパターンで、しかしそれ一辺倒には終わらず、トラッド・スイングっぽくスタートしたトラックが途中ソロ・パートが進むにつれ、極めてアップトゥデイトなバピッシュ路線や甘美なリリカル趣向へ推移したり、トリオ・ナンバーでも最初からファンキー系ハード・バップ・タイプの粋で瀟洒な寛ぎバラード大会が悠々貫かれたり、などの転回もあって、道程は何げに予断を許さない、意表を衝くフレッシュなスリルも充分の進行を見せており、大いに瑞々しく愉しめる。
★コーエン(p)の、トラディッショナル黒人ジャズへの愛着・憧れも深そうな素朴でおおらかなストライド(またはブギウギやラグタイム)・スタイルの行き方と、今風のハードボイルドなモード・アクション、加えてレッド・ガーランドやウィントン・ケリーとかにも底通する軽妙洒脱なリラックス・ファンキー小唄的アプローチ、を極めて巧みに、しかしあくまで自然に連繋連動させ交差させてゆくその、エキサイトしてくると少々荒っぽくアクロバティカルな(これでもか!と叩きつけるような)曲芸弾きが炸裂したりもする、そうした大層イキのいい生命力や前のめりの躍進パワーに溢れた音キャラは好感度抜群で、また、硬質なシャープネスみなぎったきめの細かいリリシストぶりを発揮するヒル(tp)や、デカダン・レイジーでビター・テイスティーな翳り深いコク旨ブロウを端正に紡ぐアルダナ(ts)、らの活躍も各々魅力たっぷりに際立っている。
01. Symphonic Raps (sideA1) 3:07
02. Reflections At Dusk (sideA2) 5:11
03. Toast To Lo (sideA3) 6:41
04. Future Stride (sideA4) 5:53
05. Second Time Around (sideB1) 6:27
06. Dardanella (sideB2) 5:24
07. You Already Know (sideB3) 3:30
08. Pitter Panther Patter (sideA5) 2:24
09. My Heart Stood Still (sideB4) 4:56
10. Little Angel (sideB5) 3:37
Emmet Cohen (piano)
Russell Hall (bass)
Kyle Poole (drums except 08)
*special guests:
Marquis Hill (trumpet on 02,03,07,10)
Melissa Aldana (tenor saxophone on 02,03,07)
2021年作品
レーベル:
Mack Avenue
在庫有り
三つ折りデジパック仕様CD
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