ピーター・バーンスタイン(1967年米ニューヨークシティ生まれ)とグイード・ディ・レオーネ(1964年イタリアのバーリ生まれ)、という、各々アメリカとイタリアを代表するモダン・ギターの最高実力者二人がガッチリと組み合ったカルテットによる、故ジム・ホールに捧げられたライヴ編。潤いを充分含んだきめ濃やかなトーンで、ちょっと仄暗くアンニュイに憂愁っぽい情緒をしっとり描き出す、線の細さ・センシティヴさの際立った微妙なニュアンスに富む左チャンネルのギター(ディ・レオーネ)と、より太く厚く芯の据わった、潤いと同時に旨味をたっぷり有するトーンで、バップ・ギターもしくはブルース・ギターの伝統的イディオムに準拠したイナセげなアーシー・グルーヴィー節を根幹としつつ、ヒンヤリ冷涼でメロウな耽美的メランコリック・フレーズも多々的確に盛り込んでくる右チャンネルのギター(バーンスタイン)、とが絶妙の好対照を成しながら和気あいあいとリラックスしたムードで悠々見せ場を分け合ってゆく、心地よくも味わい多彩で中々密度の高い充実内容。インティメイトな寛ぎと軽妙滑脱な小気味のいいスイング感に貫かれた、何より歌心=メロディーの美や和声の端麗さを大切にするリリカルな和み筋バピッシュ奏演、が何ともハートフルに、落ち着いた調子で品よく展開され、ベース&ドラムの安定律動性とフェイント奇襲意匠を巧みに使い分ける芸の細かい、ツボをしっかり押さえたバックアップ、にガッチリ支えられ、ノセられて、ダブル主役のギター2者の、肩の力は抜けていながら結構デリケートに機微を掬い取ってゆく風な、端正で慎重そして丁寧な何げに刻々と表情を転じるアドリブ・プレイが、ともに構成センスも抜群のドラマティックで行間深いさすが醸熟の冴えを見せて素晴らしい。ディ・レオーネの、基本は巧まざる自然体調子で気品と憂いと爽涼味に満ちたジム・ホール直系っぽい翳り&デリカシーある妖艶節を軽やかに綴り、ハード・バップ色濃いダイナミック・スウィンギンな局面にあっては、よりイキで精悍な硬派筋ブルージー・バップ・フレーズも溌剌と繰り出す、さりげなく喜怒哀楽豊かな半劇的ストーリーテリングが爽やかに、瑞々しく際立っており、一方バーンスタインの、普段はグラント・グリーン系統のわりかしソウルフルな吟醸的ブルース表現やクリスチャン〜ケッセル・タイプの正統派王道バップ・スタイルを身上とするだけあって、ここではトリビュートの宴に相応しく極めて神妙に粛々とジム・ホール流儀へ寄せた殊の外クールでグルーミーな、十全に考え抜かれ、練り上げられ周到に工夫の凝らされた哀愁浪漫文脈の創出に真摯に腐心しているが、そうこだわりすぎることもなく適所で伸び伸びと得意の勇み肌鉄火節を炸裂させたりもして、そうした、あくまで嬉々として「役」を演じることを楽しんでいる感じな鳴音のあり様は、実に(引き出し多く)懐広そうでこれまた超芳醇この上なし。機敏かつ少々饒舌に追い上げてくるDeidda(b)の歌いっぷりもナイス・アクセント。全般に、優しく温和で平易ながら雅やかな幽玄がそこはかとなく漂う熟達の逸品。
1. I'm Getting Sentimental Over You (George Bassman)
2. Bon Ami (Jim Hall)
3. Two's Blues (Jim Hall)
4. All Across The City (Jim Hall)
5. I Hear A Rhapsody (George Fragos, Jack Baker, Dick Gasparre)
6. Waltz New (Jim Hall)
7. How Deep Is The Ocean (Irving Berlin)
8. St. Thomas (Sonny Rollins)
Peter Bernstein (guitar) (right channel)
Guido Di Leone (guitar) (left channel)
Dario Deidda (bass)
Andy Watson (drums)
2019年12月ライヴ録音
レーベル:
Abeat for Jazz (Abeat Records)
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CD