1940年代に主に西海岸で軍隊のバンドや、ブルース歌手:ジミー・ウィザースプーンのバンドで頭角を現し、やがてボストンに移ってボストン音楽院に学んで腕を磨き、クインシー・ジョーンズ、ハーブ・ポメロイ、タッド・ダメロンらとも共演、50年代にはNYのハード・バップ畑で、また1964年にはマイルス・デイヴィス・クインテットに一時在籍して異彩を放ち、次第にその本領であるアヴァンギャルド〜フリー・ジャズ系統の芸風・作風に唯一無二の妙味を発揮するようになって、Blue Noteから数々の意欲作、問題作を発表して高い評価を得、70年代には所謂ロフト・ジャズ・ムーヴメントの興隆に大いに貢献しつつImpulse!等から続々と気合溢れるアルバム群を発表、90年代から晩年に至るもなおチャレンジングに、ユニークな尖鋭筋の若手陣と組んで野心的な音楽冒険を続けた、硬質強堅さと奔放さを併せ持つ黒人フリー・ジャズ・テナー(ss,fl,pも)の名匠:サム・リヴァース(1923年オクラホマ州エル・レノ生まれ、2011年フロリダ州オーランドで死去)の、本盤は、そのプレイもいよいよ熟成され脂もノリにノッてきた1971年6月、セシル・マクビー(b)&ノーマン・コナーズ(ds)との強力トリオによる、ボストンのthe Jazz Workshopでの未発表ライヴ音源を初ディスク化した、エキサイティングな発掘アルバム。シャープな締まりとふくよかさを併せ持った味のあるトーンのテナー、或いはより細く甲高くトンガったトーンのソプラノが、アグレッシヴ&パッショネートにフリーキー音交じりで力強く不屈げな激烈咆哮をこれでもかと轟き渡らせ、かと思えば、軽やかで爽涼な音色のフルートが、幾分かの思索性を漂わせつつも小鳥のさえずり(もしくはそよ風?)のように清々しく瑞々しい吹鳴を展開、更には、徹底して硬質で鋭角的なパーカッシヴ・タッチのピアノが、ひたすらアブストラクト&アナーキーに破壊力全開で暴れ回ったりもし、一方、わりかしストレート・ダイナミックにスイングするドラム&ベースの安定感あるサポートと相まって、多少異形ではあるがスカッと壮快にノレる昂揚世界を確固と現出させた敢闘内容。全2曲、スピリチュアル・ジャズの正統的スタイルに則った、熱血でいて風格や威厳ある、ごくわかりやすいエネルギッシュな、興奮と感動の絶えぬ完全燃焼の熱演が続き、コナーズ(ds)やマクビー(b)のハイテンションにして芸の細かいバックアップも、極めてテイスティー・グルーヴィーでナイスだが、しかし何よりも先ずリヴァース(ts,ss,fl,p)の、迷いなく悔いなく爆裂しまくる突き抜けた大奮戦ぶりが、理屈を越えた超鮮烈な冴え渡り様を見せていて圧倒的だ。→テナーによる、熱く濃い情魂味をたぎらせ、ほとばしらせながら、同時にハード・バップ的な渋旨さ・グルーヴィーさもしっかり漂わせる、根深く揺るぎない骨芯の通った芳醇ブローイングや、フルートでの、ファンタジックな中に伝統的ブルース・テイストをシカと宿した舞い泳ぐが如き滑脱吹奏、ソプラノによる歌心と破壊的抽象性が自ずと共存したパワフルなエモーショナル絶叫など、全編問答無用に血沸き肉躍る、そして旨味たっぷりな手練の至芸が横溢して、誠にゴキゲン。
1. Emanation. Part I 31:09
2. Emanation. Part II 45:32
Sam Rivers (tenor saxophone, soprano saxophone, flute, piano)
Cecil McBee (bass)
Norman Connors (drums)
1971年6月3日米マサチューセッツ州ボストンにおけるthe Jazz Workshopでのライヴ録音
レーベル:
NoBusiness
こちらで試聴できます。
在庫有り
CD