CATFISH RECORDS

★円熟にして益々多角的・野心的な快進撃を続ける個性派ピアノの異才:ブラッド・メルドー(1970年フロリダ州ジャクソンビル生まれ)の、今回はソロ・ピアノによるバッハをテーマとしたコンセプチュアルな意欲作。内容としては、バッハ作「平均律クラヴィーア曲集」から4つの前奏曲と1つのフーガを取り上げ、それぞれ先ずは原曲をきっちりとプレイし、続いて同曲をメルドー流の新解釈で発展させた即興的な演奏(After Bach)が現れる、という趣向で、更に冒頭とラストにはメルドー作曲のバッハをイメージした楽曲2つが配された、全12曲の構成。
★クラシック音楽然とした、折り目正しく端麗優雅である種の厳粛さをも含む非常にセンシティヴな様式美的行き方と、同じ出発点を持ちながらもより自由滑脱なメルドー流のコンテンポラリー・ジャズ、へと引き寄せられた、ある時は荘厳でエレガント、またある時はダークで不穏な様相をも呈するスリル充分のアプローチ、とが交差して、抜群に瑞々しい感動とサスペンスに溢れた格調高い音世界、がクール&ジェントルに創出された敢闘内容。
★クラシックや現代音楽の色合いも強い、独特のサロン感覚や半室内楽テイストも仄めく、端正だが決して甘くはない凛としたシリアスめのリリカル奏演が、丹念に紡がれてゆき、原曲トラック群での神妙真摯に繰り出される一音一音には、落ち着いた諦念っぽさや一抹の深い思索性が漂う一方、よりリズミカルでダイナミックさを増した転回を見せるところもあるジャズ化(?)トラック群での、原曲の情趣を活かしながらも奔放さや暗く苦い瞑想感・内省感が際立った感のある、その硬質で力強く歯切れのいい歩の進め様にも、理屈を越えた中々パワフルなグルーヴと迫真味があって、これまた圧倒的だ。陰影濃くも骨太く重厚にノワール&メディテーショナル(orスピリチュアル)な気迫みなぎる音景色を堂々活写して見せる、厳しく険しい表情ながらも豊かな旨味(所々にブルース・テイストとかも)に富んだ、全くブレのない、雄渾たる語り口は昂揚感満点、説得力も絶大。

1. Before Bach: Benediction
2. Prelude No. 3 in C# Major from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 848
3. After Bach: Rondo
4. Prelude No. 1 in C Major from The Well-Tempered Clavier Book II, BWV 870
5. After Bach: Pastorale
6. Prelude No. 10 in E Minor from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 855
7. After Bach: Flux
8. Prelude and Fugue No. 12 in F Minor from The Well-Tempered Clavier Book I, BWV 857
9. After Bach: Dream
10. Fugue No. 16 in G Minor from The Well-Tempered Clavier Book II, BWV 885
11. After Bach: Ostinato
12. Prayer for Healing

Brad Mehldau (piano solo)

2017年4月18日〜20日マサチューセッツ州ウースター(Worcester)のMechatrics Hall録音

レーベル：Nonesuch

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見開き紙ジャケット仕様CD