★円熟の快進撃が続く人気黒人ピアニスト:サイラス・チェスナット(1963年メリーランド州ボルティモア生まれ)の、今回は、デヴィッド・ウィリアムズ(b)&ヴィクター・ルイス(ds)、の先輩陣と組んだトリオによる一編。
★歯切れよくも潤い豊かで濃淡ある、誠に美味なピアノ・タッチによる、よく練られた筆運びの細やかさや作劇構成っぽさと、自然体の豪放磊落さが絶妙に掛け合わされた、メリハリ充分の滑脱なリリカル・バピッシュ・プレイが、さすが熟した吟醸的魅力を伸び伸びと揮いきった快演内容。
★メロディアスな抒情性・歌謡性や、ブルース由来の渋い旨味、に溢れた、緩急も按配よくつけられる明快娯楽的ハード・バップ演奏が、和気あいあいかつおおらかに展開され、程好く荒削りで推進パワー抜群なドラム&ベースの、的確機敏にパンチ・キック!を噛ましてくるようなスウィンギン鳴動、にガッチリ支えられながら、チェスナットの、リキみなげでいて自ずと抑制も利いた、中々剛柔自在のアドリブ妙技が爽やかに、そしてハートウォーミングにゴキゲンな好調ぶりを見せる。ダイナミックにしてクール・スマートなまろやかテイストのモーダル・アクション技や、ブロック・コードを活かしたイキでイナセな微熱的ファンキー節、硬派でシブい鋭角的バップ・イディオム・プレイ、エヴァンスに接近した繊細で耽美的なロマンティシズム表現、更には、ゴスペル(またはR&Bか)に寄ったアーシー&スピリチュアルな歌謡グルーヴ調に、燻し銀的ストライド奏法、などなど、多彩でいて伝統に深く根を下ろした種々のアプローチを流麗にミックスし、実に親しみやすくも、従来には決してなかったような瑞々しさ一杯の音景色に仕上げてゆく、という、その、全体を通じて、ナチュラルな軽みと優しさ(加えて、適度な粗さ)に貫かれた懐深い鳴音のあり様が、理屈抜きに超素敵だ。
1. I've Never Been In Love Before (F. Loesser) 5:43
2. Gloria's Step (S. La Faro) 4:21
3. Hello (L. Richie) 6:06
4. From A Tip (V. Lewis) 5:54
5. Day Dream (E. Ellington / B. Strayhorn) 3:38
6. Brotherhood Of Man (F. Loesser) 6:26
7. Yemenja (J. Hicks) 4:13
8. A Time For Love (J. Mandel / P. Webster) 8:26
9. Polka Dots And Moonbeams (J. Burke / J. Van Heusen) 4:51
10. I Didn't Know What Time It Was (L. Hart / R. Rodgers) 7:05
Cyrus Chestnut (piano)
David Williams (bass except 9)
Victor Lewis (drums except 9)
2015年作品
レーベル:
HighNote
在庫有り
CD